イランカラプテ!キミです!
今回はアイヌと観光業について僕の意見を書こうと思います。アイヌ民族と観光は古くから深い関係にあります。それはアイヌ社会が日本国に取り込まれたときから始まっている事で、現金収入を得る為に仕方なく始めた側面もあると思います。僕の出身地二風谷もアイヌ文化や土産物をベースにした観光地としてとても栄えた時代もありました。今でもアイヌ文化を観光の目玉としています。
観光を考える上で僕が重要だと思うのは収入源と異文化という2つの面です。
この記事を書いてみたら約4000字と、読み切るのに10分程かかるものになってしまったので、はじめにまとめを書きます。
まとめ
異文化を理解しようとしない人にこちら(文化を見せる側)が頭を悩ませる必要はないし、そんな人に理解してもらうために労力を割く必要はないと思っています。そして、目先の利益だけ見て、先祖が残した資産を安売りするのはもうやめにしましょう。今その商品を何も考えずに1万円で売ってしまう事で、これから先、何十年とアイヌが権利収入を得る機会も売ってしまっているかもしれません。その商品を1万円で売ることは構いませんが、その商品の購入者がその商品を使って利益を上げるならば、その一部はアイヌに還元させることを考えましょう。アイヌが団結して権利を主張すれば社会は必ず動かせます。国連はアイヌ(先住民)の味方です。
この考えに至る経緯が下に続いています。
アイヌと観光に関する記事が道新に出ていたので引用します。2020年に白老町に開設される「国立アイヌ民族博物館」「民族共生象徴空間」に関するものです。
こころ揺らす
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「魅力もっと」
その象徴空間の在り方を巡り10月上旬、東京都内で開かれた政府のアイヌ政策推進会議の作業部会(非公開)で激論が交わされた。きっかけは委員の一人で、道内ホテル大手「鶴雅ホールディングス」の大西雅之社長が配った「象徴空間の方向性への提言」と題したA4判2枚の資料だった。
「アイヌ文化に深い関心を持つ人から、観光気分の人まで対象にした施設づくりを」「広い層に多様な楽しみを提供するエンターテインメント性が不可欠」
さらに大西氏は、先住民族文化を伝える施設として、年間300万人が来場するハワイ・オワフ島の観光施設「ポリネシア文化センター」の動画を流し、伝統的な建築を生かした施設や店がにぎわっていることを紹介。白老の象徴空間の計画では、施設の設計が近代的で「テーマパーク的な雰囲気を出しづらい」と指摘し、再考を促した。
アイヌ文化を観光の目玉にする釧路市阿寒湖温泉でホテルを運営してきた大西氏には、強い思いがあった。「アイヌ民族の誇りを回復するには、より多くの人に訪れてもらい、歴史や文化を理解してもらうことが必要。そのためには施設自体の魅力が欠かせない」
これに対し、作業部会の研究者の委員は「人なんて集まらなくてもいい。象徴空間は、アイヌ民族の心のよりどころとなることが大事だ」などと大西氏の発言に否定的な見解を示した。
背景には、アイヌ民族と観光を巡る複雑な経緯がある。北海道アイヌ協会の山丸和幸理事(白老町)は「戦前からの北海道観光において、アイヌ民族の踊りや儀式は、奇妙なもの、異質なものを見たいという好奇心を満たす存在だった」と説明。そして「アイヌが『見せ物』になることが差別や偏見を増幅させているとして、民族内から批判があった」と振り返る。
好奇の目 今も
現在も観光に携わるアイヌ民族は、観光客から「どんな所に住んでいるの」「何を食べているの」と聞かれ、普段の生活を説明すると、「何だ」とつまらない顔をされることがあるという。アイヌ民族への理解が浸透していないことから、いまだに好奇の目線にさらされる現状があるという。
伝統的な踊りや工芸の技術などは、観光客らが見に来ることで自立的な継承が可能になる側面もある。象徴空間は、観光施設としての魅力を持ちながら、アイヌ民族への理解を深めてもらう場になり得るかー。北大アイヌ・先住民族研究センターの佐々木利和客員教授は「過去の観光の反省点は、アイヌ民族と和人の間で深い意思疎通がなかった点だ。アイヌ民族自身が主体的に観光に関わり、和人側も敬意を持って接することが大切だ」と語る。
政府の構想では、象徴空間の意義について「アイヌの人々による歴史・伝統・文化等の継承・創造の拠点」とともに、「国内外の人々の理解を促進する拠点」と掲げる。「どちらか一つではない。二兎(にと)を追わなくてはいけない」と委員の一人は言う。象徴空間開設に向け関係者の模索が続く。
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2017年(平成29年)12月30日(土曜日)25面 [第1社会]より
観光業と収入源
現代社会において現金収入はなくてはならないものです。かつての伝統的な暮らしであれば、食べるものは狩猟採集や畑で育てたもので賄い、自分たちの文化圏で手に入らないモノは交易で手に入れていましたが、そのような暮らしは明治以降法律によって不可能になってしまいました。その頃から生活の為にやむなく観光に携わる事になったアイヌはたくさんいたと思います。僕の祖父も一時期、見世物のような観光にイヤイヤながら携わったことがあると著書にあります。
そもそも観光業に携わる一番の動機は収入源としてでしょう。「お金なんていらないから私たちの文化を知ってほしい!」「私たちの誇りを取り戻すためにアピールしたいんだ!」という人はいないとまではいいませんが極少数でしょう。
ではどのように観光と収入を結びつけるのが良いでしょうか。今までの方法は(1)ショー(見せ物)をして入場料(出演料)を得る、(2)土産物を(作り)売る、(3)博物館・美術館などに作品を展示して入場料を得る、(4)作品作りなどの体験をさせ料金を得る、といった方法でした。
(1)や(2)はショーの内容や土産物が、旅行者の求めるものと合致したときに収益が最大化されます。こちら(アイヌ側)が本当にしたい事・見せたい事・作りたい事と、旅行者の見たい事・買いたいものが一致しない場合は当然あります。そのときに、内容を変化させるのは提供者(アイヌ)側でした。それは収入を得るために(やむなく)したことではありますが、その行為自体がアイヌ内部からの反発も招きました。
僕は新しい観光と収入の関係として(5)権利で収益を得る、という方法を選択するべきだと考えています。アイヌ(先住民)が今まで培ってきた知識や意匠(デザイン)などの権利は、アイヌ(先住民)が所有すると考えられます。根拠は国連で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」によります。
先住民族の権利に関する国際連合宣言採択 国際連合総会第61会期(2007年9月13日)翻訳 北海道大学アイヌ・先住民研究センター~略~第31条1.先住民族は、その文化財、伝統的知識及び伝統的な文化的表現並びに人間やその他の遺伝物質、種子、薬品、動植物の特性についての知識、口承伝統、文学、意匠、スポーツと伝統的競技並びに視覚的及び舞台的芸術を含む自己の科学、技術及び文化の表現を維持し、管理し、保護し、及び発展させる権利を有する。また、先住民族は、この文化財、伝統的知識及び伝統的な文化的表現に係る知的財産を維持し、管理し、保護し、及び発展させる権利を有する。~略~